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時代と向き合うジャーナリスト
私見だが、現代日本に生きる最もハードボイルドな男は、
本多勝一である。

どんな権力にも屈しないタフな反骨精神で、
社会のあらゆる不正・腐敗を暴き、どこまでも誠実な優しさをもって常に搾取される側・差別される側に立って闘う、誇り高き男。

暗い街角で泣いている子供の声を聞くと、
そのまま通り過ぎることのできないような男、
それが本多勝一だ。

元朝日新聞記者。現在ジャーナリストにして、『週刊金曜日』編集委員。既に70歳を超えており、休刊した某雑誌で「老害」などと揶揄されながらも、その言動は衰えをしらない。

ジャーナリストに経歴・肩書の類いは関係ない。
今までに何を為してきたか。それがすべてだ。
何を問題とし、どう考え、どう行動し、どう伝えたか。

本多勝一の仕事を知ることは、
そのまま現代史に向き合うことと同じ意味をもつ。

ベトナム戦争、カンボジア虐殺、
アメリカ合州国のレイシズム、肥大する覇権国家の現況、日中戦争における南京大虐殺、アイヌ民族の問題、環境破壊、未成年者の犯罪、そして今ではタイムリーともいえるNHK受信料拒否の論理…など、一連のルポルタージュにより、常に前人未到の領域を取材・発表し、都度社会に大きな波紋をよび、重い課題を投げかけている。

彼の論稿集『殺される側の論理』を初めて読んだ時の衝撃は忘れられない。

膨大な知識と、深く確かな現実認識に基づいた倫理。
そして曖昧さを排した厳しい視点に立ち、徹底して事実にこだわった緻密な論理。
それらを駆使し、社会の暗部に圧倒的な力量で迫るルポや論稿の数々は、私のこれまでの考え方、生き方を一変させた。
何よりも時代と向き合う、その揺るぎない「姿勢」の凄さに打ちのめされ、時に眩暈さえ覚えたほどである。

人によって激しい拒絶反応を起こすのは当然のことだ。
(似非)知識人・ジャーナリストに敵は多いし、読者の方も「ホンカツ信望者」を除いては、「本多は左翼で売国奴論者」が大概は息巻いている。

何事にも「曖昧」「言動不一致」「流されやすく」「利己主義」な日本人の気質を、彼は断固拒否する。
戦争責任の「一億総懺悔」に象徴されるこの国の悪しき通念を駆逐し、権力はもとより、「体制側御用」文化人・知識人を完全論破・粉砕していく彼の言動は、堕落した日本の思潮への義憤に発するものであって、本多勝一が自著で繰り返して述べているように、この日本を、日本人を愛しているからこそ、の論理である。


何ごとも表面のみをなぞり、モノゴトの本質を見極めない…。欺瞞だらけの政治に怒り、今も昔も私腹を肥やすことにかけては世界トップクラスの政治家どもの
馬鹿ヅラを嘲笑はしても、次の選挙では律儀に棄権もしくは現権力に投票する…。
「自己責任」という言葉の響きが好きだ…。
流されることが心地よい……。

こんなことは、
本多勝一を知り、同じ時代を「生きている」ことを意識している人々にとっては、おそらく無縁の話だろう。



本多 勝一 / 朝日新聞社出版局(1982/01)
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多少感情的かと思われる部分もありますが・・・
「殺される側」による人類進化に期待する
ベトナム、アイヌ、調査・探検される者


Journalism : comments(0) : trackbacks(0) : kikyo
降りそそぐ殺傷爆弾の下で…
「私は呪詛のような言葉を胸にくりかえし唱えていた。イラクを爆撃するな。それより、すでに殺した死者の数を正確に数えろ。一人ひとり正確に数えつづけろ」


…厚く垂れ込めた暗雲の切れ間から巨大な国家暴力の荒れ狂う彼の地を言葉の力で照射する論考集。

辺見庸は問う。
堕落した「正義」を糧に、何故国家にだけ人を殺すことが許されるのか。
有史以来、ほんの一握りの君主・政治家・官僚・軍人・企業が結託した「戦争ごっこ」或いは「陣取りゲーム」は、自在に変幻しつつ現在に至るまで繰り返され、無残な屍の山を延々と築きあげてきた。飛躍的に殺傷能力を上げた兵器と、マスメディアをも組み込んで日常化した戦争システム。

…そして、我々は飼い慣らされていく。

「メディアも企業も市場もいまや戦争突入に合わせた体勢づくりにいそしみつつある…乾いた損得勘定と円滑なルーティンワークだけが最優先されていく」


世相という「ムード」に押し流され、知らずに我々も殺す側にいるのではないか。そして、巨大な権力が一極集中化した覇権国家の出現を眼前にして、どう対抗できるのか。


辺見庸は、記す。
殺すな、へと続く言葉を紡ぎ、根源的な問いを発しよ、と。
道標は我々の内にこそある。もはや遠い国の出来事と傍観する余裕はない。
暴力に対抗する言葉の力を信じよ、と。


現代日本において最もラジカルな姿勢を貫き、状況と向き合うアクチュアルな言説を呈示する作家は辺見庸ただ一人である。
あたかもイラクの空から降りそそぐ殺傷爆弾の下、身体とその未来を切断された子どもに寄り添い、無慈悲な暴力に対抗する怒りの言葉を叫ぶが如く、暗く重い情念が文体に満ち、読む者を圧倒する。

著者に賛同するも反発するも、自由。
ただ、辺見庸が問題としている事実を排した言論に、現在の戦争を語る資格はないと私は思う。



辺見 庸 / 講談社(2005/05)
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