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千切れたノート



新しいノートを何気なく手に取った。


パラパラとページをめくり
さて何を書こうかと思案していた時、
私はあることに気づいた。

ちょうどノートの中ほどに
一枚分が破かれた跡を見つけた。


勢いよく引き千切った様子を物語る
ギザギザのまま残った切れはし。

いつ購入したのか、記憶は定かではなかった。
あるいは、誰かに貰ったのか……。

日記など記したことの無い自分にとって
記憶とは、破り取られたページのごとく
失われていくもののひとつだった。


椅子にもたれ、しばらく眼を閉じた。

朝から降り続いていた雨は、
いつのまにか雪へと変わり、
遠くサイレンの音だけが響いていた。


私は手許にあった青いペンを取り、
最初のページに Liberty とだけ書いた。
次の言葉は思い浮かばなかった。

その一言のみが、
この真新しくも不完全なノートに相応しいと
ひとり満足した。



傍で眠っている子どもの寝顔を見つめた。
握り締めた小さな手。
枕元には、丸まった紙くず。

それを拾い上げ、机の上で開いた。
千切れたノートのページには、何も書かれていなかった。

ただし……
菓子で汚した小さな指の跡以外は。


私は、幼い子の成長の標として
最初のページの後に、それを挟み込んだ。
青いインクがチョコレートの痕跡へと滲んでいく。


……或る冬の夜は
そうして過ぎていった。


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